医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらが得?
10万円の線・市販薬1.2万円の線と戻ってくる税金
病院や薬にかかったお金は、確定申告で所得から引けることがあります。方法は2つで、医療費控除は1年の医療費が10万円(所得が200万円未満なら所得の5%)を超えた分、セルフメディケーション税制は対象の市販薬が1万2,000円を超えた分(最高8万8,000円)です。どちらか一方しか使えないので、控除額の大きいほうを選びます。
最終確認日:2026年10月19日
2つの違い
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 対象になるお金 | 病院・歯科の治療費、治療のための薬(市販薬も含む)、通院の電車・バス代など | 対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など)の購入費だけ |
| 引かれる額 | 10万円(総所得金額等が200万円未満なら、その5%) | 1万2,000円 |
| 控除の上限 | 200万円 | 8万8,000円 |
| 条件 | なし | その年に健康診断・予防接種などを受けている |
| 計算式 | 医療費 − 保険金などで補てんされる額 − 10万円 | 対象の市販薬の購入費 − 1万2,000円 |
どちらも、自分と生計を一にする家族の分(配偶者・子・親など)をまとめて、実際に払った人が申告できます。対象になるのはその年の1月1日〜12月31日に払った分です(未払いの分は、払った年の対象になります)。
どちらを選ぶかは「控除額」で比べる
どちらも所得から引く控除なので、戻ってくる税金は控除額にほぼ比例します。つまり、「医療費の合計 − 10万円」と「対象の市販薬 − 1万2,000円」の大きいほうを選べば、たいてい得なほうになります。
- 医療費の合計(市販薬も含む)が10万円を大きく超える年 → 医療費控除
- 通院は少ないが、対象の市販薬を年に1万2,000円より多く買っている年 → セルフメディケーション税制
たとえば医療費の合計が11万円(うち対象の市販薬4万円)なら、医療費控除は1万円、セルフメディケーション税制は2万8,000円で、セルフメディケーション税制のほうが控除が大きくなります。
戻ってくる税金の目安
控除額がそのまま戻るわけではありません。控除額 × 税率の分だけ、その年の所得税と、翌年度(2027年6月から)の住民税が減ります。給与だけ・社会保険料が年収の15%(年収150万円は0円)・ほかの控除なしで計算しました。
| 2026年の給与収入 | 所得税の税率 | 医療費20万円のとき (医療費控除) | 対象の市販薬5万円のとき (セルフメディケーション) |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 0円(非課税) | 16,200円 控除16.2万円・住民税だけ | 3,800円 控除3.8万円・住民税だけ |
| 300万円 | 5% | 15,100円 | 5,700円 |
| 500万円 | 5% | 15,100円 | 5,700円 |
| 700万円 | 20% | 30,400円 | 11,600円 |
| 1,000万円 | 20% | 30,400円 | 11,600円 |
- 年収500万円・医療費20万円の例:控除額は 20万円 − 10万円 = 10万円。所得税は 10万円 × 5% × 1.021 で約5,100円、住民税は 10万円 × 10% = 1万円減って、合わせて約1万5,100円です。
- 年収150万円の例:給与所得は76万円なので、引かれる額は10万円ではなく 76万円 × 5% = 3万8,000円。医療費20万円なら控除は16万2,000円です。所得税はもともと0円なので減らず、住民税だけが減ります。
2026年分の所得税は基礎控除が大きくなったため(給与だけなら年収178万円まで所得税0円)、所得税が0円の人も多くなります。その場合も住民税は減ることがあります。住民税がもともと0円の人は、どちらの控除を使っても税金は戻りません(くわしくはパートの住民税はいくらから?)。
計算してみる
| 医療費控除 | セルフメディケーション | |
|---|---|---|
| 控除額 | ||
| 所得税が減る額 | ||
| 住民税が減る額(翌年度) | ||
| 合計 |
給与だけ・社会保険料以外の所得控除なしの概算です。住民税は所得割10%で計算し、調整控除などの細かい調整は入れていません。セルフメディケーション税制の計算では、市販薬への保険金などの補てんはないものとしています。
医療費控除の対象になるもの・ならないもの
国税庁のタックスアンサー(No.1122)にもとづく主なものです。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 医師・歯科医師の診療や治療の費用 | 健康診断の費用(原則)、医師へのお礼 |
| 治療のための薬(かぜ薬などの市販薬も含む) | ビタミン剤など、予防や健康増進のための薬 |
| 通院の電車・バス代 | 自家用車のガソリン代・駐車場代、電車やバスが使えるときのタクシー代 |
| 治療のためのあん摩マッサージ・はり・きゅう・柔道整復の施術 | 疲れをいやす・体調を整えるための施術 |
| 入院の部屋代・食事代で通常必要なもの、治療に必要な松葉杖・補聴器・義歯など | 家族や親類に付き添いを頼んで払った付添料 |
健康診断の費用は原則として対象外ですが、健診で重い病気が見つかり、そのまま治療を受けた場合は対象になることがあります。くわしくは国税庁の「医療費控除の対象となる医療費」をご覧ください。
セルフメディケーション税制を使うための条件
健康診断などの「一定の取組」
申告する本人が、その年に次のどれかを受けている必要があります(家族が受けている必要はありません)。
- 勤め先の定期健康診断
- 健康保険組合・市区町村の国保などが行う健康診査(人間ドックなど)
- 特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導
- 市区町村のがん検診、健康増進事業の健康診査
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチン)
確定申告書に添付する必要はありませんが、受けたことが分かる書類(結果通知や領収書など。氏名・年・実施した機関の名前が書かれたもの)は、申告期限から5年間、税務署から求められることがあるので保管しておきます。健診や予防接種の費用そのものは、この控除の対象になりません。
対象の市販薬の見分け方
対象は、病院で処方される薬から市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」などです。対象の商品は、購入したときのレシート(領収書)に対象である旨が表示されます。パッケージに共通の識別マークがついている商品もあります。品目の一覧は厚生労働省のホームページに載っています。
手続き
- 確定申告が必要です。会社員も、勤め先の年末調整ではこの控除は受けられません。2026年分は2027年に確定申告をします(還付を受けるための申告は、3月15日より前から出せます)。
- 確定申告書に「医療費控除の明細書」または「セルフメディケーション税制の明細書」をつけます。領収書の添付は不要ですが、申告期限から5年間は保管します。
- 健康保険から届く「医療費のお知らせ」(医療費通知)を添付すると、医療費控除の明細書の記入を簡単にできます。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーで入力すれば、明細書も一緒に作れます。医療費控除の人は、国税庁の「医療費集計フォーム」(Excel)で集計したデータを読み込めます(セルフメディケーション税制では使えません)。
- 一度選んだら変えられません。セルフメディケーション税制で申告したあとで、医療費控除に変える(またはその逆)ことは、更正の請求や修正申告でもできません。申告の前に両方を計算して比べましょう。
確定申告をすれば、住民税にも同じ控除が反映されます。ふるさと納税でワンストップ特例を申請していた人は、確定申告をすると特例が無効になるので、寄付も確定申告に入れてください(ワンストップ特例と確定申告のどちら?)。
2027年からのセルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は期限つきの特例で、今の法律では2026年12月31日までに買った分が対象です。2026年分は今のルールで使えます。
政府の「令和8年度税制改正の大綱」では、2027年分以後について次の見直しが決まっています。
- スイッチOTC医薬品の購入費の部分は期限をなくす。それ以外の対象の医薬品の部分は期限を5年延長
- 胃腸薬などの消化器官用薬、一定の生薬を含むせき止め・たん切りの薬、一定の検査薬(体外診断用医薬品)、薬局で作って売る一定の薬を対象に加える
- やせる目的や美容目的で使われるおそれのある医薬品は対象から外す(経過措置あり)
住民税は令和10年度分(2027年分の所得)から同じ見直しが入ります。引かれる1万2,000円・上限8万8,000円の金額は、大綱では変わっていません。2027年分の対象品目は、厚生労働省の一覧が更新されたら確認してください。
よくある質問
- Q. 医療費控除とセルフメディケーション税制は両方使えますか?
- 使えません。どちらか一方を選びます。セルフメディケーション税制を選んだ場合は、ほかの医療費が10万円を超えていても、通常の医療費控除は一緒に受けられません。
- Q. 共働きの夫婦はどちらが申告すればいいですか?
- 生計を一にする家族の医療費は、実際に払った人が申告します。所得税の税率が高い人が払って申告すると、戻る税金は多くなります。ただし、総所得金額等が200万円未満の人は「引かれる額」が10万円より小さくなるので、医療費が少ない年はそちらで申告したほうが控除が大きくなることもあります。セルフメディケーション税制は、申告する本人が健康診断などを受けている必要があります。
- Q. 保険の入院給付金をもらいました。どうなりますか?
- 保険金や健康保険の高額療養費・出産育児一時金など、医療費を補てんするお金は、その対象になった医療費から引きます。補てんの額がその医療費より多くても、ほかの医療費からは引きません。
- Q. 医療費控除でいくら戻ってきますか?
- 控除額 ×(所得税の税率 × 1.021 + 住民税10%)が目安です。所得税の税率が5%の人なら控除額の約15%、20%の人なら約30%です。上の計算ツールで確認できます。
出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(令和8年4月1日現在法令等:計算式・最高200万円・総所得金額等200万円未満は5%・明細書・医療費通知) nta.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」 nta.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー No.1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」(1万2,000円・最高8万8,000円・一定の取組・書類) nta.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー No.1131「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」 nta.go.jp
- 租税特別措置法 第41条の17(平成29年1月1日から令和8年12月31日までに支払った特定一般用医薬品等購入費)、地方税法 第314条の2第1項第2号・附則第4条の5(住民税の医療費控除と特例) e-Gov法令検索
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(セルフメディケーション税制の期限の撤廃・延長と対象の見直し。所得税は令和9年分以後、個人住民税は令和10年度分以後) mof.go.jp
この記事は、公表されている法令・資料をもとにした一般的な説明です。戻ってくる税金は、ほかの所得や控除によって変わります。実際の申告は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや税務署でご確認ください。