iDeCoは受け取るときに税金がかかる?
一時金・年金の計算と、退職金がある人の「9年」「19年」ルール

iDeCoは、掛金を払うときは税金が安くなりますが、受け取るときは課税の対象です。ただし大きな控除があり、控除の範囲内なら税金はかかりません。会社の退職金がある人は、その控除を退職金と分け合うことになります。

最終確認日:2026年10月12日

2026年1月から変わった点:iDeCoの一時金を先に受け取り、あとで会社の退職金を受け取る場合、これまでは「5年以上あければ」退職金の控除を満額使えました。2026年1月1日以後に受け取るiDeCoの一時金からは、10年以上あけないと控除が減ります(退職金を受け取る年の前年以前9年内が対象)。

受け取り方は3つ。税金の種類が違う

受け取り方税金の種類使える控除
一時金(まとめて1回)退職所得(ほかの所得と分けて計算)退職所得控除
年金(5年以上20年以下で分けて)雑所得(公的年金などと合算)公的年金等控除
一時金と年金の併用それぞれ上のとおり両方

一時金で受け取る場合

控除額は「掛金を払った年数」で決まる

会社の退職金では勤続年数を使いますが、iDeCoでは掛金を払った期間を使います。1年に満たない端数は1年に切り上げます。

掛金を払った期間退職所得控除額
20年以下40万円 × 年数(80万円に満たないときは80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)
掛金を払った期間10年15年20年25年30年
控除額400万円600万円800万円1,150万円1,500万円

税金の計算式

(一時金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税される金額(1,000円未満切り捨て)

この金額に、所得税(5〜45%、復興特別所得税を含めると1.021倍)と住民税(10%)がかかります。給与などのほかの所得とは分けて計算します。

例(ほかに退職金がない人)控除額課税される金額所得税住民税税金の合計
加入20年・一時金800万円800万円0円0円0円0円
加入20年・一時金1,000万円800万円100万円51,050円100,000円151,050円
加入20年・一時金1,488万円800万円344万円265,970円344,000円609,970円

3つ目の1,488万円は、月6.2万円を20年間積み立てたときの掛金の合計です(運用で増えた分は入れていません)。2026年12月分から会社員の上限は月6.2万円に上がりますが、上限まで積み立てると、20年でも控除額の800万円を大きく超えます。月2.3万円なら20年で552万円なので、控除の範囲内です。

ただし、税金がかかるからといって損になるとは限りません。たとえば年収500万円の会社員が月6.2万円を積み立てると、掛金の控除で安くなる税金は1年で約11.2万円(社会保険料を年収の15%、ほかの控除なしとした概算)、20年続ければ約225万円です。受け取るときの税金は、それと比べて考えることになります。

計算してみる(ほかに退職金がない場合)

万円
年
退職所得控除額
課税される金額
所得税(復興特別所得税を含む)
住民税
税金の合計
税金を引いたあとの金額

令和8年分(2026年分)の計算です。同じ年やその前後に会社の退職金を受け取る人は、下の説明のとおり控除額が変わるため、この計算は使えません。金融機関の給付の手数料は入れていません。

会社の退職金がある人は、控除の枠を分け合う

退職所得控除は、iDeCoと会社の退職金で別々に満額を使えるわけではありません。受け取る時期が近く、iDeCoの加入期間と会社の勤続期間が重なっていると、重なっている年数の分だけ、あとから受け取るほうの控除が減ります。

受け取る順番控除が減る条件
同じ年に両方2つを合計して、控除は1回分(長いほうの期間+重なっていない期間で計算)
退職金が先、iDeCoの一時金があとiDeCoを受け取る年の前年以前19年内に退職金を受け取っている
iDeCoの一時金が先、退職金があと退職金を受け取る年の前年以前9年内にiDeCoの一時金を受け取っている(2026年1月1日以後に受け取ったiDeCoの一時金。2025年までに受け取った分は4年内)

iDeCoは75歳になるまでに受け取る必要があるので、60歳で退職金を受け取った人が、あとからiDeCoの一時金を受け取る場合は、必ず「19年内」に入ります。

計算例

22歳で入社し、40歳から60歳までの20年間iDeCoに加入した会社員が、退職金2,000万円とiDeCoの一時金600万円を受け取る場合です。

受け取り方退職金の税金iDeCoの税金合計
参考:iDeCoがなく、60歳で退職金だけ(勤続38年)0円—0円
A 60歳の同じ年に、退職金とiDeCoの両方合計して計算446,122円
B 60歳で退職金、翌年以降にiDeCo0円425,912円425,912円
C 60歳でiDeCo、65歳で退職金(勤続43年)143,497円0円143,497円

Bで重なりが20年でなく19年、Cで15年になるのは、先に受け取った金額が、そのときの控除額より少なかったためです。この場合、先に受け取った金額を40万円(800万円を超える部分は70万円)で割った年数だけを、重なっている期間として数えます。Bでは退職金2,000万円が37年分、Cでは iDeCo 600万円が15年分にあたります。

Cの形は、2025年までにiDeCoの一時金を受け取った人なら「5年あければ控除は減らない」扱いで、退職金の税金も0円でした。2026年1月以後にiDeCoの一時金を受け取る人は、65歳で退職金を受け取ると9年内に入るため、上のとおり税金がかかります。

この例は、定年の年齢や退職金の額がそれぞれ違うので、「どの順番が得か」を一般的に示すものではありません。自分の場合の金額は、勤続期間・加入期間の日付で変わります。受け取る前に、金融機関や会社の担当、税務署に確認してください。

「退職所得の受給に関する申告書」を出す

一時金を受け取るときは、支払う側に「退職所得の受給に関する申告書」を出します。出しておけば、上の計算どおりの税金が天引きされ、原則として確定申告はいりません。出さないと、受け取る金額の20.42%が天引きされ、確定申告で精算することになります。前に受け取った退職金やiDeCoの一時金がある人は、その内容もこの申告書に書きます。

年金で受け取る場合

年金で受け取る分は、国の年金(国民年金・厚生年金)や企業年金と合計して「公的年金等の雑所得」になります。合計額から公的年金等控除を引いた残りが雑所得で、給与などのほかの所得と合算して税金を計算します。

1年間の公的年金等の合計雑所得の金額(65歳未満)
60万円以下0円
60万円超 130万円未満合計 − 60万円
130万円以上 410万円未満合計 × 0.75 − 27万5千円
1年間の公的年金等の合計雑所得の金額(65歳以上)
110万円以下0円
110万円超 330万円未満合計 − 110万円
330万円以上 410万円未満合計 × 0.75 − 27万5千円

公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合。410万円以上の区分は省略しています。

国の年金だけで控除額(65歳以上は110万円)を超えている人は、iDeCoを年金で受け取ると、その全額が雑所得に加わります。雑所得は、基礎控除や社会保険料控除などを引いたあとの金額に税金がかかるので、上乗せされた金額がそのまま課税されるとは限りません。

なお、公的年金等の合計が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の人は、所得税の確定申告をしなくてよい制度があります(年金から税金が天引きされている場合)。払いすぎた税金を返してもらうには、確定申告が必要です。

どちらで受け取るかを考えるときの材料

これから掛金を決める人は、節税額の目安をシミュレーターで確認できます。

よくある質問

Q. 運用で増えた分にだけ税金がかかるのですか?
いいえ。受け取る金額の全体(掛金の元本を含む)が対象です。掛金を払ったときに、その全額が所得から差し引かれているためです。
Q. 専業主婦(夫)やパートで、掛金の節税がなかった人も課税されますか?
受け取るときの扱いは同じです。一時金なら退職所得、年金なら公的年金等の雑所得として計算します。控除の範囲内なら税金はかかりません。
Q. 2025年までにiDeCoの一時金を受け取りました。退職金はどうなりますか?
2026年1月1日より前に受け取ったiDeCoの一時金は、これまでどおり「退職金を受け取る年の前年以前4年内」かどうかで判定します。
Q. 勤続5年以下で退職金を受け取る場合や、役員の退職金も同じ計算ですか?
いいえ。勤続5年以下の退職金や、役員としての勤続が5年以下の退職金には、「1/2にする」計算に制限があります。この記事の計算は、それ以外の一般的な退職金を前提にしています。

出典・参考資料

この記事は、公表されている資料をもとにした一般的な説明で、令和8年分(2026年分)の制度で計算しています。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるため、所得税の額が少し変わります。実際の税額は、勤続期間・加入期間の日付や、ほかの所得によって変わります。受け取り方を決める前に、金融機関や税務署でご確認ください。特定の金融商品の購入をすすめるものではありません。